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RESEARCH (研究内容): 微生物ロドプシン

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 ロドプシンとはレチナール色素が結合した光受容体タンパク質です。光受容体とは、光を刺激として受け取り機能する有機分子やタンパク質を指します。ロドプシンは、我々ヒトをはじめとする動物の目にも存在していますが、私の研究で対象としているロドプシンは微生物が持つタイプです(専門的には、微生物型をタイプ1、動物型をタイプ2と呼びます)。

 微生物型ロドプシン(以下、特筆しない限りはロドプシン=微生物型として記述します)の機能は大きく分けて、

  1. イオン輸送するもの(イオンポンプ・イオンチャネル)

  2. センサーとして働くもの

  3. 酵素活性を持つもの  の3つに分かれるとされています。

 私はイオン輸送の中でも、特定のイオンを細胞の内側から外側、あるいは外側から内側に運ぶ(ポンプする)機能のロドプシンについて研究を行なっています。

 近年、遺伝子解析技術の発展により、輸送するイオンの種類が異なる、様々なロドプシンが発見されると共に、それを持つ微生物(私の場合、バクテリア・アーキアが専門です)や生息する環境が多様であることも分かってきました。生態系にはロドプシンを保有する微生物も多く、例えば海洋環境では、光が当たる表層において、生息しているバクテリア・アーキアの半数以上、多いところでは7〜8割にものぼると言われています。

 イオンポンプの中で、外向きにプロトン(H  )を輸送するロドプシン(H  ポンプ)は、光を受容すると細胞の内側から外側にH  を排出します。これにより、細胞の内外でH  の濃度勾配が形成され、生命に共通のエネルギー通貨と言われるATP(アデノシン三リン酸)を合成するATP合成酵素を動かすことができます。この「濃度勾配」というのは光合成や呼吸といったエネルギー生産システムでも共通するもので、ロドプシンは非常に単純な仕組みのエネルギー生産システムとも考えることができます。(ただし、基本的にはロドプシンのみで生きていく上でのエネルギーすべてを作ることはできず、呼吸や光合成をする必要があり、あくまで、補助的なシステムとされています。

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 ロドプシンは、外向きのH  ポンプ以外にも、外向きのNa  ポンプ・内向きCl  ポンプ・内向きH  ポンプ・内向きSO   ポンプといった機能が知られています。また、1種のゲノム中に複数のロドプシンが存在するパターンも知られており、どのロドプシンをいつどのように使うのか、というのはロドプシンを保有する原核生物の光利用戦略を考える上で非常に重要です。

  • 新規ロドプシン探索 (随時加筆予定)

  • ロドプシン保有細菌の遺伝子解析 (随時加筆予定)

  • ロドプシン保有細菌における色素(レチナール)獲得戦略 (随時加筆予定)

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RESEARCH (研究内容): 新種・未培養微生物の探索

 地球上には10   ~ 10   細胞オーダーにも達する膨大な微生物が生息していると言われています。その種類も多様で、100万種とも1000万種とも推測されています。しかし、2020年現在、バクテリア・アーキアの原核生物として正式に名前がついている種は16,000種を少し超えた程度です(LPSN: List of Prokaryotic names with Standing in Nomenclatureより)。遺伝子解析技術の発達により、培養株を得ることなく、遺伝情報として環境中にどのような微生物がいるのかは明らかにされつつあり、培養・未培養の原核生物のゲノム(全遺伝情報)では、30,000種以上に分類されています(GTDB: Genome Taxonomy Database 95より)
​ 私が主に対象としている海洋を例にとると、1mLの海水には10   ~ 10   細胞の原核生物が生息していますが、その中で培養ができるのは、全細胞のうちの1%以下、あるいは0.1%以下とされています。ゲノム(遺伝子)情報のみではその微生物についての理解には限界があり、その生理・代謝活性や増殖条件、他の生物との相互作用などについては培養株を得て、研究することによって解明できるものです。
​ 培養条件や環境など、様々な工夫をし、新種の微生物を単離してくる「新種の探索」および、培養非依存的に環境サンプルの全ての遺伝情報を読み取るメタゲノム解析を用いた「未培養微生物の探索」を行っています。
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